E君は、大学生の二年生の頃、同年の友達と後輩2人の4人でE君の車で心霊スポット行こうと有名な◯◯トンネルへと向かった。
トンネルの入り口付近まで来ると向こうからトラックのライトの光が見えたので
トラックを優先するために少し待つことにした。
運転席のE君は、助手席の後輩Aに何かを話しかけた時に黒っぽいモヤのようなものを胸元に見た。
見間違いか?とそれほど気にすることもなかった。
後ろの座席では友達と後輩が騒いでいた。
トラックが通り過ぎるのをしばらく待ってもトラックは来ない。
痺れを切らして車を走らせた。
トンネルを通り越したがトラックなどどこにもいない。
不思議に思ったが気のせいだったのか?
トラックのライトを見たのは後輩Aと2人だけで後ろの2人は気づきもしなかった。
何もなかったねと話しながら帰宅した。
それから1週間ほどした頃、E君のアパートの部屋のバスルームでボヤがあった。
ちょうどその頃、彼は外出していて無事だった。
同じ日の同じ時間帯に後輩Aがバイク事故で亡くなった。
トラックのライトを見たのは運転席と助手席の2人だけ。後輩Aの胸元のモヤを見たのは事故と何か関係があるのかもしれない、たまたま自分は外出していて無事だったのかもと考えた。
そんな話をしてくれて、私はびっくりした。
あの当時話してくれたらどう感じたかわからないけど、嘘をついているとは思わなかっただろう。
アメリカは自由な国だから、便利屋のような何でもやるくらいの仕事をやっていたので逞しい人だなと思った。
以前、テレビ局の報道で働いていた頃にシタイを見ることになり、何度も嘔吐したという話をしてくれた。
サウジアラビアに出張に行って息子と私に金属製のブレスレットのようなものをお土産にもらった。
高価なものでもなくその頃はこういう感性が好きだったので毎日身に付けていた。
今でも捨てずに置いてある。
戦地の取材だ。
過酷な仕事もしばらくして辞めた。
その日は急に来たこともあり、彼は夕方から予定があるからと帰った。帰り際にハグをという格好をした。
「ここはアメリカじゃないよ、日本だから」
と言ってもハグをという。
軽くハグをしたが、その時もやはり耳鳴りがしたらしい。
それから3ヶ月くらいした後にまた会うことになった。BARのようなお店で軽くご飯を食べて酒を飲んだ。
私はその頃もっぱら洋酒で特にバーボンを飲んでいた。
その帰り道で、そろそろ解散にしようということになり、E君はタクシーに乗って帰ろうとしていた。また、ハグをしたいと言うので、もう慣れっこになった私は彼を軽めに抱きしめた。
その時に耳鳴りは鳴ったそうだけど、メッセージを受け取ったらしい。
そういう言い方はしなかったけど、何か言葉が聞こえたそうだ。
「それ言ってもいいの? 人生が変わっちゃうかもしれないんだよ」
何言ってんの、何を聞いても驚かないから早く言って!」
強めに返した。
慎重な面持ちで言った。
「導いていくんだよ」
「何を? 人を?」
E君は頷いた。
「私はね、そうなりたいって思っているから、その言葉はうれしいわ。ありがとう」
E君はホッとした表情で手を振った。
「またね」
それから2年くらいが経った。
E君がまた日本に来たと連絡があった。
ある5月だったと記憶している。
「18日に会えるかな?」
その夜は、若い女友達とBARで飲む約束をしていたので、断った。他の日はダメなの?と聞いたが彼の返事は強引だった。
「その約束変えられないの?」
「変えられない、約束してたんだよ。変えられないよ」
「じゃあ、僕も一緒に行ってもいい?」
その子に良いかどうか聞いてみると言うことで電話を切った。
彼の強引さには驚いた。今までそんな言い方しなかったし、すごくびっくりした。
友達に聞いたらその子は朝方までオールでいるから大丈夫との返事だった。
流石に私もそこまでは付き合えない。
友達との待ち合わせの時間は夜の8時だった。
彼女は常連でカウンターにすでに座って飲んでいた。
「おっ!もう飲んでるの?」と挨拶をして隣に座ってその左側にはE君。
お互い簡単に紹介してからオーダーをした。
そのお店は何度か彼女たちに連れてきてもらい、その後からも他店舗にも入り浸ったりした。
酒の瓶をまわしたりするパフォーマンスが売りだった。
それがなくてもステキなお店だ。
しばらくして彼が実験してみると言い出した。
変なことを言い出した。
彼女に確認したら面白そうと乗り気だった。
私が媒体になるという話で、彼と私が手を繋ぎ、もう片方の手を彼女と繋いだ。
彼はその人のネガティヴなものがわかるんだそう。
反対にポジティヴなことはわからないと言う。
でも、私に「導く」というのは決してネガティヴじゃない、ポジティヴだろう。
すぐさま、彼女のネガティヴなことを読み取ったようだ。
私に耳打ちをしてくる。
「彼女の心臓は〇〇だ」
そんなこと聞きたくない。
合ってるかどうか聞いてくれと言う。
私は断った。
彼女には適当に伝えた。
けれど、彼のリーディングというのか透視というのかそれは間違ってないと思えた。
結局、私たちは彼女を残して深夜3時頃には店を出た。
もちろんそんな時間は彼も帰れない。
私のサロンで泊まることになった。
コンビニで朝食が簡単に作れるものを買ってサロンに戻った。
風呂を沸かし、先に入ってもらってセミダブルベッドに寝るように言った。
私は施術簡易ベッドがある。けれど、何もしないからと同じベッドで寝た。
朝起きて食事の用意をしていたら私を呼ぶ声がした。
「おはよう、眠れた?」
彼は私のことを苗字をさん付けで呼ぶ。
「うん、ありがと。〇〇さん、首が痛いでしょう。後でマッサージしてあげる。寝てる時に腕とか当たるでしょ。それで首が痛いってわかったよ」
一宿一飯の恩義と言いたいらしい。
「気にしないで、私はもともと首が弱いの」
「僕は女房のマッサージとかしてあげるんだよ。だから上手いよ」
「へー、そうなのね、優しいんだね」
朝食を向かい合って食べる。なんか不思議な感覚。午後になってマッサージをすると言うのでお言葉に甘えて1時間ほどやってもらった。
「〇〇さんも僕にヒーリングして」
「なぜ? また耳鳴りがするんでしょ。やらなくても良いよね」
「マッサージしたからだいぶ慣れてきたから大丈夫だと思う」
よくわからないが彼の身体に1時間くらいヒーリングをした。
エネルギー交流になったからか?
「耳鳴りは大丈夫?」
耳鳴りはしなくなったらしく、私のエネルギーに慣れたのかな。
また、お茶を入れ直して寛いだ。
続く